株は7万円、REITは年初来安値 ——同じ「不動産」に 二つの値段がついている
日本の資産市場で、大きな「温度差」が生まれています。
日経平均株価は10月6日に終値70,684円をつけ、7月以来の7万円台に乗せました。週末の10月9日は69,031円で、4週連続の上昇です。2025年末の50,339円から約37%上がっています。一方、オフィスビルや賃貸住宅などを保有するJ-REIT(不動産投資信託)の値動きを示す東証REIT指数は、10月9日に1,659.87ポイントと、年初の2,013.50ポイントから約18%下落しました。6月につけた年初来安値も下回っています。これまで旭森観察室では、大阪の地価(VOL.41)、家賃(VOL.45)、オフィス賃料(VOL.46)がそろって上がっていることを見てきました。実物の不動産が好調なのに、不動産を持つREITの価格は下がり続けている——本号では、この乖離の理由と、それが投資家に意味することを整理します。
日経平均 7万円 2026年10月 終値 70684円 AI 半導体 4週連続上昇 TOPIX 最高値
上昇をけん引しているのは、AI・半導体関連の銘柄です。10月5日には、米国の雇用統計が予想より弱く利上げへの警戒が和らいだことで半導体株が買われ、アドバンテストや東京エレクトロンなど4銘柄だけで日経平均を約1,084円押し上げました。株探の週末コメントは、日米をはじめ主要国の長期金利は上がり続けているものの、市場はAI・半導体の成長が金利上昇を上回ると判断している、と分析しています。
東証REIT指数 2026年10月 年初来安値 下落 1659 金利上昇 分配金利回り
資本市場研究会の分析(『月刊資本市場』2026年9月号)によると、上半期のJ-REIT下落の主な要因は、中東情勢の悪化、国内長期金利の急上昇、そして世界的なインフレ観測の高まりでした。日本の10年国債利回りは上半期だけで2.07%から2.68%へ上がり、9月には3%台に乗っています(VOL.42)。
REITは家賃収入を分配金として投資家に配る商品で、「利回り」で選ばれる性格が強いため、国債の利回りが上がると相対的な魅力が下がりやすくなります。加えて、AI・半導体株に資金が集まる中で、東証REIT指数とTOPIXの比率は6月末に0.45倍と過去最低水準まで下がりました。株式への資金シフトも、REITの出遅れに拍車をかけた形です。
J-REIT NAV倍率 0.87倍 NAV割れ 鑑定評価 実物不動産 乖離 分配金利回り 5%
この乖離を最もはっきり示すのが「NAV倍率」です。NAVは、REITが保有する不動産を鑑定評価額で計算した純資産の価値です。NAV倍率が1倍を下回ると、市場がそのREITの不動産を鑑定評価より安く値付けしていることを意味します。
J-REITのNAV指数は6月末に2,082ポイントと過去最高水準
大阪の地価は商業地+8.8%(VOL.41)
大阪市の家賃は前年比+10.1%(VOL.45)
大阪のオフィス賃料は前年比+8.4%(VOL.46)
NAV倍率は6月末に0.87倍(3月以降は一時0.84倍)
東証REIT指数は年初来約−18%
REIT/TOPIX倍率は過去最低の0.45倍(6月末)
6月末以降もさらに下落
つまり、鑑定士が評価する不動産の価値は過去最高水準にある一方、株式市場ではその不動産が約13%引き(6月末時点)で取引されている状態です。その後もREIT価格は下がっているため、割引幅はさらに広がっているとみられます。
在日華人 投資 株高 J-REIT 実物不動産 資産配分 先行指標
実物の不動産を持っている方にとって、REITの値動きは市場の先行きを映す鏡になります。REITが下がり続けるのは、プロの投資家が金利上昇による不動産価格の調整を意識しているサインでもあります。大阪の家賃や地価が好調でも、売却や買い増しのタイミングを考える際には、こうした市場の見方も参考にする価値があります。
実物の区分マンションは、自分で物件を選べ、借入も使えますが、数千万円単位の資金が必要で、すぐには売れません。REITは少額から分散投資でき、いつでも売買できますが、株式市場の気分に価格が大きく左右されます。今のように両者の値動きが大きく食い違う局面では、それぞれの性格の違いを理解しておくことが大切です。
株価が上がると、資産を増やした個人や企業の購買力が高まり、都心の高額物件への需要を支える「資産効果」が働きやすくなります。一方で、株高がAI関連に偏っている点や、金利が上がり続けている点を考えると、株高だけで不動産の先行きを楽観するのは避けるべきでしょう。
日経平均は10月6日に7万円台で引け、年初来で約37%上昇しました。一方、東証REIT指数は10月9日に1,659.87ポイントと、年初来で約18%下落し、6月の安値も下回っています。AI・半導体への資金集中と金利上昇が、明暗を分けました。
J-REITのNAV指数は6月末に過去最高水準でしたが、NAV倍率は0.87倍でした。鑑定評価と市場価格のギャップは、REIT市場が先行きの調整を織り込んでいるのか、売られすぎなのか、どちらとも読める状態です。
実物の不動産を持つ投資家にとって、REITの下落は金利上昇リスクへの警告として受け止める価値があります。一方、割引が続くなら、少額で不動産に投資する手段としてREITを見直す余地も生まれます。いずれにしても、株高の勢いや目先の割安感だけで判断せず、金利と家賃の行方を見ながら冷静に考えることが大切です。旭森観察室は、これからも一次データに基づく蒸留された情報をお届けします。
